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通訳訓練(14) Sight Translation|英日 — 1

通訳・翻訳
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ようこそ「通訳訓練シリーズ」へ。今回は英日サイト・トランスレーション(サイトラ)をご紹介します。

サイト・トランスレーション(サイトラ)とは

「サイト・トランスレーション」は、「サイトラ」と短縮されることもあります。ここでは通訳訓練法の1つを指す用語として使っており、ここからは「サイトラ」と呼んでいきます。英語では「sight translation」や「sight interpreting」等と言われますが、「sight interpreting」と言うと、通訳者が原稿を見ながら行う通訳を想起させると考える人もいます。

サイトラは基本的には、この通訳ブログですでにご紹介した「順送り訳(頭ごなし訳)」の応用練習です。「スラッシュ・リーディング方式の訳」だとも言えますが、「スラッシュ」を原稿に入れたりしません。頭の中で、原文を「意味のユニット」に分けながら訳出する練習をします。サイトラでは、原文(オリジナル)を目で見て把握した意味内容をいかに素早く、かつ日本語として不自然でない、的確なことばに訳出していくかが重要になります。

同時通訳ですと、音声を聞き原文の意味を把握しつつ、それを目標言語に訳出しながら、次から次へと聞こえてくる音声から意味内容を理解して訳出していくというプロセスを続けていくわけです。サイトラ訓練では原文の意味は音声ではなく視覚を通して、脳に入ってくるのですが、あたかも音声を通して入ってきているかのように、次から次へと頭ごなしに順送りに訳をしていく練習をします。

別の人の話す音声を聞くのではなく自分が目で追って原文の意味を把握するので、サイトラ訓練のスピードは、練習をしている本人が決めることが出来ます。とはいえ、目で追いながら意味のユニットごとに原文を把握し、これをわかりやすく的確な日本語に置き換えていくという一連のプロセスをできるだけ素早く行えるように練習します。

単に英語を日本語に置き換えるという機械的な作業に終始することなく、頭の中でさまざまな訳出の可能性を検討しつつ、最適な訳出をするつもりで練習に取り組みます。

サイトラは同時通訳に必要なスキルを習得するための最重要トレーニングに数えられています。

今回の通訳訓練をする前に、「順送り訳」のコツや、「意味のユニット」や、「スラッシュ・リーディング方式の訳」等をおさらいする方は、この2つの記事↓↓をご覧ください。

また、英日通訳のコツ・工夫のまとめをおさらいする方はこちら↓をどうぞ。

なぜ通訳トレーニングとして有効か

練習をする前に、サイトラの有効性をまとめておきましょう。

・サイトラ訓練は、音声を使わないとはいえ、「原文の意味把握 ⇒ 意味の目標言語での再表現 ⇒ 原文の意味把握 ⇒ 意味の目標言語での再表現・・・」というプロセスを切れ目なく続けることから、いわば同時通訳のシミュレーション練習だと言えます。

・サイトラ訓練時の認知的負荷は高くなりますので、同時通訳に必要な認知的体力を強化することにつながります。

・サイトラは自分のペースで訳出練習ができ、自分の訳を検討し、さらに良い訳し方がないか等、分析したり検討したりすることが出来ます。様々な訳し方を考えること自体も、通訳スキル向上につながります。

・練習に機材等は不要ですので、いつでもどこでもサイトラ訓練が可能です。

・実際の通訳現場でサイトラのような形態の通訳をする場合もあるので、そういうときのための模擬練習になります。例えば、オリジナル原稿を通訳の直前に渡され、それを見ながら通訳をするというようなケースもあります。また、パワーポイント・プレゼンで、その資料の一部が原文でしか準備できなかったため、それを見ながら資料を訳してほしいと依頼される場合もあります。

・自分が通訳を担当する予定の発話者の言葉遣いや言い回しを事前にある程度知っておきたいものですが、発話者の過去の発表原稿などを入手できれば、それを使ってサイトラ練習することで、少しでも慣れておくことが出来るかもしれません。小生は、あるシンポジウムでベルギー出身の発話者の英日同時通訳を担当しましたが、事前に、この人の過去の発表原稿を使ってサイトラ練習をしたことがあります。英語とフランス語は似ていますが、フランス語的な独特の言い回しや語順、言葉の選択も含めて、この発表者の言葉遣い・言い回しに一定程度慣れておくことが出来て大変有益でした。

今回の練習教材

使用する原文はオバマ大統領が2016年9月20日に国連総会で行った最後のスピーチです(出典American Rhetoric)。内容は、彼の8年間の任期中に世界全体が進歩したことを称賛する一方で、世界平和と繁栄を脅かす対立と分断の動きに対して警告を発して、分断ではなく協調の道を歩むよう呼びかけるものです。

この原文を4回に分けてサイトラ練習で使っていきます。今回は冒頭から第12段落までを訳出練習します。

参考訳出例(第1及び2段落)

まず第1段落及び第2段落の参考訳例をご覧ください。意味のユニット単位で順番に頭から訳しつつ、原文の意味内容を日本語としてなるべく自然な形で再表現することを目指して訳しています。

実際にサイトラをするときは、口で和訳をしゃべると同時に目では原文の次の部分を読み進めていきます。

第1段落

Mr. President;

国連総会議長、

Mr. Secretary General;

事務総長、

fellow delegates;

各国代表の方々、

ladies and gentlemen:

ご列席の皆様、

As I address this hall as President for the final time,

このホールで大統領として最後の演説を行うにあたり、

let me recount the progress that we’ve made these last eight years.

この8年間の進展を振り返ってみたいと思います。

(註 — 「President」は「President of the UN General Assembly」のことで、日本語では国連総会議長と呼ばれます。任期は一年間で、国連総会の投票によって加盟国から選出されます。)

第2段落

From the depths of the greatest financial crisis of our time,

史上最大の金融危機のどん底にあった時、

we coordinated our response

私たちは対応を調整して、

to avoid further catastrophe

さらなる大惨事を回避し、

and return the global economy to growth.

世界経済を成長軌道に戻しました。

We’ve taken away terrorist safe havens,

テロリストの隠れ家を取り除き、

strengthened the nonproliferation regime,

核不拡散体制を強化し、

resolved the Iranian nuclear issue through diplomacy.

イランの核問題を外交によって解決しました。

We opened relations with Cuba,

キューバとの国交を回復し、

helped Colombia

コロンビアを支援して、

end Latin America’s longest war,

ラテンアメリカで最も長い戦争を終結させ、

and we welcome a democratically elected leader of Myanmar to this Assembly.

民主的に選出されたミャンマーの指導者をこの総会に迎え入れました。

Our assistance is

私たちの支援は、

helping people feed themselves,

人々が自らの食糧を確保し、

care for the sick,

病人を看護するのを助けています。

power communities across Africa,

アフリカの地域社会に活力を与え、

and promote models of development rather than dependence.

依存ではなく開発のモデルを推進しています。

And we have made international institutions

また、国際機関である

like the World Bank and the International Monetary Fund more representative,

世界銀行や国際通貨基金などの代表性を高めるとともに、

while establishing a framework to protect our planet

地球環境を守る枠組みを確立し

from the ravages of climate change.

気候変動の弊害防止を図っています。

(註 — 1. 「the greatest financial crisis of our time」は「史上最大の金融危機」と訳していますが、原文に忠実に訳すと「私たちの時代で最大の金融危機」ではないのかと、お考えの方もおられるでしょう。しかし、リーマンショックは実質的に史上最大の金融危機であり、日本語のメディアではこのフレーズで言及されることのほうがはるかに多いので、通訳の聞き手にとって理解しやすいであろう訳し方を選びました。2. 「opened relations with Cuba」は直訳すると「キューバとの関係を開く」等となりますが、広く周知の事実を反映して「キューバとの国交を回復し」と訳しました。)

具体的なサイトラ練習方法

では、上の第1及び2段落の訳出例のように、意味のユニットごとに訳出をしていきましょう。ただし、下の原文は、意味のユニットで区切ってありません。サイトラ練習では、区切ってないままの原文を目で追いながら、頭の中で適切に意味のユニットごとに区切って訳出をしていきます。

上の参考訳出例の導入でも触れましたが、一つの意味のユニットの訳出をしながら、同時に目はその次の部分に移っていきます。そのようにして、次々と意味のユニットを目で追いながら、その意味内容を把握しつつ訳出を進めていきます。

具体的には次のように進めます。例えば第2段落をサイトラするとします。ここに最初の2つのセンテンスだけを転載しています。

From the depths of the greatest financial crisis of our time, we coordinated our response to avoid further catastrophe and return the global economy to growth. We’ve taken away terrorist safe havens, strengthened the nonproliferation regime, resolved the Iranian nuclear issue through diplomacy.

まず冒頭の「From」から目で原文を追いながら意味を把握していきます。目が「we」まで来たら、その直前までの部分「From the depths of the greatest financial crisis of our time」が一つの意味のユニットとして訳出可能だと判断できますので、「史上最大の金融危機のどん底にあった時」と声に出して言います。これを口で言いながら、目はすでに、次の部分を見ています。そして「to avoid」を見た瞬間に、その直前の「we coordinated our response」という部分が訳出可能な意味のユニットだと判断でき、「私たちは対応を調整して」と訳出します。この和訳を声に出して言いながら、目は次の部分を見ています。「and return」という部分が見えたら、その直前で区切って訳出可能だろうと判断できますから「さらなる大惨事を回避し」と訳出します。この訳を言いながら目は次の部分をどんどんとみていきます。原文を「and return the global economy to growth. We’ve」まで目で追えば「growth」が文末の単語であることが分かりますから、そこまでの部分を「世界経済を成長軌道に戻す取り組みをしました」と訳出します。この訳を言いながら目は次の部分を見ていきます。

今読んでいただいた説明では、和訳を声に出して言うと書きましたが、静かにサイトラ練習をする必要がある場合は、声に出さずに頭の中で和訳を言うという方法もあります。余談ですが、同時通訳の練習なども同様に、声に出さずに頭の中で訳出練習をするというやり方も可能ですね。

訳出練習

では、第1段落から第12段落までを、可能な限り原文の語順に添って、頭ごなしにサイトラ訳出練習していきましょう。原文の各段落の下に、サイトラ参考訳例及び必要に応じて註を入れます。

Mr. President; Mr. Secretary General; fellow delegates; ladies and gentlemen: As I address this hall as President for the final time, let me recount the progress that we’ve made these last eight years.

国連総会議長、事務総長、各国代表の方々、ご列席の皆様、このホールで大統領として最後の演説を行うにあたり、この8年間の進展を振り返ってみたいと思います。

(註 — 「President」は「President of the UN General Assembly」のことで、日本語では国連総会議長と呼ばれます。任期は一年間で、国連総会の投票によって加盟国から選出されます。)

From the depths of the greatest financial crisis of our time, we coordinated our response to avoid further catastrophe and return the global economy to growth. We’ve taken away terrorist safe havens, strengthened the nonproliferation regime, resolved the Iranian nuclear issue through diplomacy. We opened relations with Cuba, helped Colombia end Latin America’s longest war, and we welcome a democratically elected leader of Myanmar to this Assembly. Our assistance is helping people feed themselves, care for the sick, power communities across Africa, and promote models of development rather than dependence. And we have made international institutions like the World Bank and the International Monetary Fund more representative, while establishing a framework to protect our planet from the ravages of climate change.

史上最大の金融危機のどん底にあった時、私たちは対応を調整して、さらなる大惨事を回避し、世界経済を成長軌道に戻す取り組みをしました。テロリストの隠れ家を取り除き、核不拡散体制を強化し、イランの核問題を外交によって解決しました。キューバとの国交を回復し、コロンビアを支援して、ラテンアメリカで最も長い戦争を終結させ、民主的に選出されたミャンマーの指導者をこの総会に迎え入れました。私たちの支援は、人々が自らの食糧を確保し、病人を看護するのを助けています。アフリカの地域社会に活力を与え、依存ではなく開発のモデルを推進しています。また、国際機関である世界銀行や国際通貨基金などの代表性を高めるとともに、地球環境を守る枠組みを確立し気候変動の弊害防止を図っています。

(註 — 1.「the greatest financial crisis of our time」は「史上最大の金融危機」と訳していますが、原文に忠実に訳すと「私たちの時代で最大の金融危機」ではないのかと、お考えの方もおられるでしょう。しかし、リーマンショックは実質的に史上最大の金融危機であり、日本語のメディアではこのフレーズで言及されることのほうがはるかに多いので、通訳の聞き手にとって理解しやすいであろう訳し方を選びました。2.「opened relations with Cuba」は直訳すると「キューバとの関係を開く」等となりますが、広く周知の事実を反映して「キューバとの国交を回復し」と訳しました。)

This is important work. It has made a real difference in the lives of our people. And it could not have happened had we not worked together. And yet, around the globe we are seeing the same forces of global integration that have made us interdependent also expose deep fault lines in the existing international order.

これらは重要な取り組みで、人々の生活に大きな変化をもたらしてきました。そして、こういった取り組みに不可欠だったのは、私たちが協力し合うということでした。しかしながら、世界中で私たちが目の当たりにしているのは、グローバルな相互依存をもたらした統合の力と同じものが、既存の国際秩序に深い亀裂を露呈させているということなのです。

(註 — 1.「And it could not have happened had…」の部分は「had」まで視点が来た時点で、その前の部分を「こういった取り組みに不可欠だったのは」と訳出可能ですね。2.「And yet」は「しかしながら」と訳出できます。次の「around the globe we are seeing the same forces of global integration that have」まで視点が来た段階で「世界中で私たちが目の当たりにしているのは」と訳出していますが、同時に、次の部分を目で見ています。そして原文が「made us interdependent also expose」と進んでいくので、「グローバルな相互依存をもたらした統合の力と同じものが」と訳出しています。)

We see it in the headlines every day. Around the world, refugees flow across borders in flight from brutal conflict. Financial disruptions continue to weigh upon our workers and entire communities. Across vast swaths of the Middle East, basic security, basic order has broken down. We see too many governments muzzling journalists, and quashing dissent, and censoring the flow of information. Terrorist networks use social media to prey upon the minds of our youth, endangering open societies and spurring anger against innocent immigrants and Muslims. Powerful nations contest the constraints placed on them by international law.

このことは、毎日のニュース見出しに反映されています。世界中で、難民が残忍な紛争から逃れようと流出しています。金融の混乱は引き続き労働者や地域社会全体に重くのしかかっています。中東の広大な地域では、基本的な安全、基本的な秩序が崩壊しています。あまりにも多くの政府がジャーナリストの口を封じ、反対意見を抑圧し、情報の流れを規制しています。テロのネットワークはソーシャルメディアを利用して若者の心を食い物にし、開かれた社会を危険にさらし、罪のない移民やイスラム教徒に対する怒りを煽っています。列強諸国は、自国に課された国際法の制約に異議を唱えています。

(註 — 「Financial disruptions continue to weigh upon our workers」は、「weigh upon」まで視点が来た時点で「continue」を「引き続き」と訳出可能だと判断して、「金融の混乱は引き続き」と訳しています。)

This is the paradox that defines our world today. A quarter century after the end of the Cold War, the world is by many measures less violent and more prosperous than ever before, and yet our societies are filled with uncertainty, and unease, and strife. Despite enormous progress, as people lose trust in institutions, governing becomes more difficult and tensions between nations become more quick to surface.

これは、今日の世界を特徴付けるパラドックスです。冷戦終結から四半世紀を経て、世界は多くの面において、暴力は減少し、より繁栄しており、かつてない状態になっています。それでも私たちの社会は不確実性、不安、争いに満ちています。大きな進歩にもかかわらず、人々が制度への信頼を失うにつれ、統治はより困難になり、国家間の緊張はより急速に表面化します。

(註 — 「the world is by many measures less violent and more prosperous than ever before」の部分は、比較表現を含み、通訳しにくい原文ですね。ここでは、まず「暴力は減少し、より繁栄しており」と言っておいてから、比較の対象である「than ever before」を「かつてない状態になっています」と訳出しています。)

And so I believe that at this moment we all face a choice. We can choose to press forward with a better model of cooperation and integration. Or we can retreat into a world sharply divided, and ultimately in conflict, along age-old lines of nation and tribe and race and religion.

したがって、今、私たちは皆、ある選択を迫られていると私は思います。選択肢の一つは、協力と統合という、より良いモデルに添って前に進む道です。もう1つの選択肢は、大きく分断され、最終的には紛争に陥る世界に後退する道で、国家や部族、人種や宗教といった古くからの境界線に縛られることになります。

(註 — 1.「retreat into a world」は、「in conflict」を目にするまで、頭に保持してから、「~世界に後退する」と訳出しています。2.「along age-old lines of nation and tribe and race and religion」は、本来は「国家や部族、人種や宗教といった古くからの境界線に沿って(分断され対立する)」と訳出可能ですが、ここでは「順送り訳」方式で、まず「we can retreat into a world sharply divided, and ultimately in conflict」を「もう1つの選択肢は、大きく分断され、最終的には紛争に陥る世界に後退する道で」と訳した後で「国家や部族、人種や宗教といった古くからの境界線に縛られることになります」と訳出しています。「~に縛られる」という意味を表す動詞は原文にはありませんが、「along」の示す意味を、訳文に組み込むために使っている表現です。)

I want to suggest to you today that we must go forward, and not backward. I believe that as imperfect as they are, the principles of open markets and accountable governance, of democracy and human rights and international law that we have forged remain the firmest foundation for human progress in this century. I make this argument not based on theory or ideology, but on facts — facts that all too often, we forget in the immediacy of current events.

今日私が皆さんに申し上げたいのは、後退するのではなく前進しなければならないということです。 私は確信しているのですが、開かれた市場と責任ある統治の原則、民主主義、人権、国際法の原則は、不完全ではあるものの、私たちが築いてきた、今世紀における人類の進歩の最も強固な基盤です。私のこの議論の根拠は、理論やイデオロギーではなく事実です。目の前の出来事にとらわれるあまりに忘れがちな事実です。

(註 — 1.「as imperfect as they are」は、それを見たときにすぐに訳出するということが出来なかったので、「the principles of open markets and accountable governance, of democracy and human rights and international law」の訳出後まで記憶に保持しました。2.「in the immediacy of current events」は「現在の出来事の即時性の中で」や「現在の出来事の直後のあまりに」などと直訳すると通訳の聞き手にはわかりにくいのではないかと思います。ここでは平易な日本語で訳出しています。)

Here’s the most important fact: The integration of our global economy has made life better for billions of men, women and children. Over the last 25 years, the number of people living in extreme poverty has been cut from nearly 40 percent of humanity to under 10 percent. That’s unprecedented. And it’s not an abstraction. It means children have enough to eat; mothers don’t die in childbirth.

最も重要な事実は、世界経済の統合によって何十億もの男性、女性、子供たちの生活が向上したということです。過去 25 年間で、極度の貧困状態で暮らす人々の数は、世界の人口の 40パーセント近くから 10 パーセント未満にまで減少しました。これは前例のない進展です。 そして抽象的な話ではありません。子供たちが十分に食べることができて、母親が出産で死亡することもないということなのです。

Meanwhile, cracking the genetic code promises to cure diseases that have plagued us for centuries. The Internet can deliver the entirety of human knowledge to a young girl in a remote village on a single hand-held device. In medicine and in manufacturing, in education and communications, we’re experiencing a transformation of how human beings live on a scale that recalls the revolutions in agriculture and industry. And as a result, a person born today is more likely to be healthy, to live longer, and to have access to opportunity than at any time in human history.

一方、遺伝暗号の解読によって期待できることとして、何世紀にもわたって悩まされてきた病気の治癒があります。 また、インターネットにより、人類の知識すべてを人里離れた村の少女にも、携帯端末ひとつで届けることができます。 医療、製造業、教育、コミュニケーションの分野で人間の生き方の変革が起きていますが、その規模は農業や産業の革命を思い起こさせるほどです。その結果、今日生まれた人は、より健康で、長生きで、さまざまな機会にも恵まれる可能性が人類史上最も高くなっています。

(註 — 1.「cracking the genetic code promises to cure diseases that」は、「that」まで視点が来た時点で、まず「遺伝暗号の解読によって期待できることとして」と訳出しても構わないだろうと判断できます。2.「we’re experiencing a transformation of how human beings live on a scale that recalls the revolutions in agriculture and industry」は、目が「on a scale that」をとらえた時点で、まず「人間の生き方の変革が起きていますが」と訳出しておいて、次の部分はどのように展開するのかが分かり次第訳していくというやり方で処理しています。3.「a person born today is more likely to be healthy, to live longer, and to have access to opportunity than at any time in human history」という部分にも比較表現が含まれており、順送り訳をするためには工夫が必要です。)

Moreover, the collapse of colonialism and communism has allowed more people than ever before to live with the freedom to choose their leaders. Despite the real and troubling areas where freedom appears in retreat, the fact remains that the number of democracies around the world has nearly doubled in the last 25 years.

さらに、植民地主義や共産主義の崩壊により、かつてないほど多くの人々が指導者を選ぶ自由を手にすることができました。 自由が後退しているように見える厄介な地域が実際にあるとはいえ、事実としては、民主主義国の数がこの 25 年間でほぼ倍増しているのです。

(註 — 1.「the collapse of colonialism and communism has allowed more people」についてですが、「allow」という動詞がこのように使われている場合は「~によって」、「~ということで」、「~したことにより」など原因や理由を示すような表現を使って順送り訳が可能になることがあります。2.「Despite」があれば、その文は、必ず「~とはいえ・・・~です」とか「~とはいうものの・・・~ということは言えます」などといった展開をするということを脳裏に意識しながら視点を進めます。3.「around the world」があるので、ただ単に「民主主義国の数」ではなく「世界の民主主義国の数」と訳すほうが正確であるとも言えるでしょうが、「民主主義国の数」と言えば、「世界の」ということは、すでに暗示されているということも言えるでしょう。)

In remote corners of the world, citizens are demanding respect for the dignity of all people no matter their gender, or race, or religion, or disability, or sexual orientation, and those who deny others dignity are subject to public reproach. An explosion of social media has given ordinary people more ways to express themselves, and has raised people’s expectations for those of us in power. Indeed, our international order has been so successful that we take it as a given that great powers no longer fight world wars; that the end of the Cold War lifted the shadow of nuclear Armageddon; that the battlefields of Europe have been replaced by peaceful union; that China and India remain on a path of remarkable growth.

世界の辺境の地でも、市民がすべての人々の尊厳を尊重するよう要求しており、それは性別、人種、宗教、障害、性的指向に左右されるものではないとうったえています。そして他者の尊厳を否定する者は公の非難の対象となります。ソーシャルメディアの爆発的な普及により、一般の人々が自分自身を表現する方法が増え、私たち権力者に対する人々の要求も高まりました。国際秩序は非常にうまく保たれており、当然、大国による世界大戦はあり得ないと、私たちは考えています。また、冷戦が終結し核ハルマゲドンの脅威が消え、ヨーロッパの戦場は平和的な連合になり、中国やインドが目覚ましい成長軌道に乗っているということも、当たり前のこととして受け入れています。

(註 — 1.最初の文は、「no matter」が見えてきた時点で、まず「citizens are demanding respect for the dignity of all people」までを「世界の辺境の地でも、市民がすべての人々の尊厳を尊重するよう要求しており」と訳出して、「no matter their gender, or race, or religion, or disability, or sexual orientation, and those who」まで視点が来たら、「それは性別、人種、宗教、障害、性的指向に左右されるものではないとうったえています」と訳出しています。2.「we take it as a given that」は、まず「当然」と訳出しておいて、「great powers no longer fight world wars」の訳出後に「~と私たちは考えています」とつなげています。このように訳出した時点で、「we take it as a given that」は、その次の部分にもつながっているということが分かってくるので、「~を当たり前のことだと思う」という意味を記憶に保持しつつ、この文がどのように展開するのかをうかがいながら視点を前に進めていきます。すると、「that the end of the Cold War lifted the shadow of nuclear Armageddon」のみならず、「the battlefields of Europe have been replaced by peaceful union」も、「we take it as a given that」につながっているということが分かり、さらに読み進めていくと、「that China and India remain on a path of remarkable growth」にまで視覚で情報を追って行って初めて、ここで「we take it as a given that」につながる意味のユニットはすべて出尽くしたということが判明し、この時点で、「当然のこととして受け入れています」のように締めくくっています。)

I say all this not to whitewash the challenges we face, or to suggest complacency. Rather, I believe that we need to acknowledge these achievements in order to summon the confidence to carry this progress forward and to make sure that we do not abandon those very things that have delivered this progress.

私がこのようなことを言うのは、私たちが直面している課題をごまかしたり、自己満足を促したりするためではありません。むしろ、こういった成果を認めることが今必要だと思うからなのです。こういった進歩をさらに前進させるために自信を呼び起こし、この進歩をもたらしたものを放棄しないようにするためにです。

(註 — 「in order to summon the confidence」にあるような「to 不定詞句」も可能な限り順送り訳で処理します。)

まとめ

今回からは、英日通訳のサイトラ訓練をとりあげています。上で触れたように、サイトラは大きな効果が期待できる通訳訓練方法です。また、練習に機材等は不要であり、いつでもどこでもサイトラ訓練が可能です。たくさん練習しましょう。

次回はサイトラ訓練の2回目です。

サイトラ訓練をすると、英日通訳での接続表現(接続語)や述語表現の重要性がよくわかると思います。

英日通訳で有益な接続表現(接続語)表現についてはこちらをご覧ください。述語表現についてはこちらをどうぞ。

★ 英日通訳のコツ・工夫のまとめはこちら ⇩ です。

★ 順送り訳(頭ごなしの訳)についてはこちら ⇩ をどうぞ。

★ 通訳に関心がある人にとって読む価値のある本を、こちらで ⇩ 紹介しています。

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