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英語通訳技術習得に向けて

通訳・翻訳
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通訳をするためには、通訳技術を身につけないといけないのは分かる。でも、どうすれば技術を習得できるのだろう。その第一歩が分からないという人もいるでしょう。

Yoshi
よぴくん

今回の記事は、この第一歩についてです。技術を習得するのに必要なことをまとめます。

通訳に必要な英語運用能力

通訳をするためには、一定程度の語学力が必要です。でもどの程度の英語力でしょうか。それは、どのような通訳を目指すのかによります。例えば、アメリカから日本を訪れている友人のために通訳をする場合なら、日常会話レベルで十分でしょう。一方、講演、会議、商談、レセプション、取り調べなどの通訳となると、そういうわけにはいかないですね。以下では、主に後者について、つまり、かしこまった場での通訳について書いています。

まず、新聞などニュースメディアの記事が理解できるでしょうか。できなければ、まず高校卒業程度の英語力をおさらいします。手っ取り早いのは、 DUO 3.0』(鈴木陽一  著)のような教材を利用することでしょう。『DUO 3.0』は、わずか560個の用例を学ぶことで基本重要語彙を制覇することが出来るので大変効率が良いですね。

その次の段階は、とにかくたくさん読みたくさん聞きます。分からない単語・表現は片っ端から調べましょう。調べるときは用例を見ることを忘れずに。

まず英語をたくさん読むということに関して考えましょう。何を読めばよいのでしょうか。何を読んでも構いませんが、迷ったら、報道機関の提供するものを読んでください。お勧めの報道機関は、ReutersCNNBBCAP NewsSky NewsABC NewsCNBCBloombergNPRなどです。どんどん読んで英語に慣れていきましょう。

次に英語をたくさん聞くということについてです。集中して聞くのはもちろん有益ですし必要です。しかし、それに加えて、他のことをしているときに英語を聞き流すのも有益です。無意識のうちに英語が頭に入力され、通訳しているときに英語が自然に出てくるようになると思います。

何を聞けばよいでしょうか。何でも構いません。しかし、やはり、報道機関が最も有効です。ウエブサイトでもいいですし、報道機関の提供するアプリ(app)やYouTubeを使って配信されているものを利用することもできます。また、報道機関以外のものとしては、映画、ドラマ、ドキュメンタリーなどをAmazon PrimeNetflixHuluYouTubeなどでたくさん視聴するのも有効ですね。スピーチをたくさんアップロードしているサイトとして、TEDも便利です。

これまで見てきた、英語の理解力を増強する努力は大切ですが、しゃべる力を養うことも、軽んじることはできません。一般的な語彙・表現を用いて、英語をしゃべることができるというのは、最低限必要なことです。しかし、それに加えて、特に、かしこまった場にふさわしい英語の正しい話し方が重要です。会議、講演、商談などでは、日本語でもそうであるように、英語でもその状況にふさわしい言葉遣いがありますね。そういったしゃべり方が、すらすらと出来るようになっていないと、たどたどしい通訳をすることになります。

かしこまった場にふさわしい英語の話し方を身に着けるには、特に、英語の丁寧表現会議表現を学びましょう。

丁寧表現は、うまくまとめられた書籍があります。2冊紹介します。まず、『敬語の英語』(デイヴィッド・セイン他著、ジャパンタイムズ刊)です。目上の人やビジネスの顧客に対して使える基本的なフレーズをたくさんの様々な場面を想定して解説しています。

次は、『ビジネス英語の敬語 微妙なニュアンスを英語で伝える 状況に応じたレベル別丁寧表現(CDつき)』(浅見ベートーベン著、クロスメディア・ランゲージ刊)です。ビジネス英語で必要な「相手を敬う気持ちを伝える表現」を、丁寧度の段階に分けて説明しています。「NG」「カジュアル」「ふつう」「わりとフォーマル」「かなりフォーマル」という5段階です。

アマゾンや楽天などで検索すれば、他にも有益な本がいくつかあると思います。

会議表現に関しては、インターネット上に便利なウエブサイトがいくつもあり、それらを利用して勉強できます。検索してみてください。でも、手元に一冊持っておきたいという場合は、これをお勧めします。『携帯 会議英語―国際会議・英語討論のための表現事典』です。

日本語運用能力

通訳技術習得に必要なのは英語の勉強だけではありません。母国語である日本語も、かしこまった場にふさわしく話す必要があります。母国語であるからといって通訳として通用する日本語を話せるとは限りません。日本語運用能力を磨かないのは片手落ちです。特に、語彙・表現力敬語発音・イントネーションといったことが大切です。

まず語彙・表現力についてです。通訳は自分の考えや気持ちを表現するのではなく、他人の頭の中で作られた考え、他人が感じる感情を表現しなければなりません。したがって、豊富な語彙・表現力を持ち合わせていなければいけません。

語彙に関して、次のような状況を想定してみましょう。ある心理学者の講演会の通訳を担当しているとします。この学者の専門である心理学の語彙は事前に学習してあります。ところが、講演の最中に、心の働きを分かりやすく説明するために、戦闘状況下の戦車に乗っている兵士の話を学者が突然持ち出しました。「anti-tank rocket launcher」や「antitank mine」などといった軍事用語を使って話しています。「個人携帯対戦車弾」や「対戦車地雷」といった表現を知らなかったら、通訳者は大変困るでしょう。これはやや極端な例ですが、想定外の分野の用語が用いられることも実際にあります(語彙の学習については下の「知識と語彙の増強」で検討していきます)。

また、話者の伝えたい考え、意見、気持ちや感情の微妙なニュアンスなどを十分に表現できなければ正確な通訳とはいえません。したがって、豊富な表現力が求められます。さらに、通訳をするときはしゃべる内容を考えながら文を構成しつつ話します。文末に至ったときにその文をきちんと結ぶことが重要になります。しかも、発話者の原文の意味を正しく伝えながら、限られた時間で文の首尾を整えなければなりません。このことからも、表現力の大切さが分かると思います。

表現力に関して、もう一つ大切なことがあります。通訳は、発話者の発言の意味を正確に伝えるのみならず、分かりやすく伝えなければならないということです。あくまでも、発話者と聞き手がいて初めて通訳は成り立ちます。分かりやすく聞きやすい通訳を提供するためには高度な表現力が求められます。聞いている人が満足してこそ通訳の意義がありますから、聞かせるものとしての通訳(聞きづらくなく分かりやすい通訳)を目指しましょう。「分かりやすい」ということは、聴衆にふさわしくしゃべるということでもあります。通訳を聞いているのが特定の分野の専門家なのか、一般の人なのか、あるいは中学生なのかによって、通訳のしゃべり方も当然変わってきます。

次に、日本語の敬語についてです。日本人は、日本語が母国語であるがゆえに、敬語をきちんと使っていると無意識のうちに思っている人が多いのですが、「お見えになられる」というような二重敬語を使っている人もいます。「お客さまが拝見する」というように謙譲語を間違って使っている人もいます。正確に使えるように敬語の使い方を再確認しておきましょう。

最後に、発音・イントネーションの問題です。母国語であっても、聞き取りやすい発音でしゃべっているとは限らないので、一度、何かを自分が音読しているのを録音して、自分の発音が通訳にふさわしいか確認するのは無駄ではありません。どのような基準で確認するか分からなければ、例えばテレビやラジオなどで放送するとしたら、それに耐え得るかどうかを考えてみましょう。明瞭に聞き取れるアナウンサーのような話し方をしているでしょうか。

また、関西弁などのしゃべり方も要注意です。何年か前に、数人体制の通訳チームの一員として、東京都内でシンポジウムの同時通訳をボランティアベースでさせて頂きました。この時のチームのメンバーの一人はやや関西弁のイントネーションで通訳をしていました。それが聞こえてきたときに(通訳は交替でやっていました)、その場の雰囲気に合わない違和感を覚えました。私自身も普段は関西のイントネーションで話すことが多いので、通訳のときは気を付けるようにしています。

異文化コミュニケーションの理解

また、通訳は、言語だけの問題でもありません。言葉の単純な変換ではないのです。ただ単に話者の発言の意味を正確に伝えればよいという考え方では不十分です。通訳者が、言葉の裏にある文化的特徴や背景をも理解していなければ、話者と聞き手のスムーズなコミュニケーションは成り立ちません。具体的なポイントを3つだけ考えてみましょう。

まず、代名詞の使い方についての日本語と英語の違いです。例えば何らかの国際会議の場で、ある国の大統領に言及があった後、「He has been a frequent critic of NATO, which he has described as “obsolete.”」というような発言があったとします。これを通訳するとき「彼はNATO=北大西洋条約機構をたびたび非難してきました。彼は、NATOは時代遅れの代物だと述べています」と訳すのは不自然ですね。なぜでしょう。2つ理由がありますが、1つ目は、かしこまった状況における日本語の発話で、国家元首を「彼」と呼ぶことがあるでしょうか。むしろ「大統領は・・・」というような訳仕方をするのが自然でしょう。2つ目の理由は、この訳例で「彼は」という表現を2度使っていますが、2つ目の「彼は」は、若干くどいように聞こえるということです。「彼は」を特別に強調しているのでもなければ、この例のような場合、日本語では、英語の代名詞に当たる部分が省略されるのが自然です。

次に、日本語の言語文化では、代名詞に限らず、行為者を指す主語が省かれることが多いということを考えてみます。この特徴は、それをうまく利用すれば英日通訳では有利に働くでしょう。逆に、日本語から英語に通訳するときは、前後の脈略を考えて意味上の主語を補うほうが良い場合があるということを念頭に置きましょう。例えば、日本語で「~と言われています」という発言は、場合によっては、例えば(意味上の主語にふさわしく)「Critics say」や「according to the company’s officials」などのような、補い方をするのが賢明かもしれません。

最後は、会談や表敬訪問などでしばしば使われる日本語の表現「お疲れでしょう」をとりあげます。日本語では、この表現があいさつとしてよく使われます。これは相手の状況や心情をおもんばかって言う言葉です。日本の言語文化では、これは自然な表現です。しかし、もしこれを「You must be tired」などと直訳すると、それを聞いた英語文化圏の人は「自分はそれほど疲れた顔をしているのか」あるいは「それほど、ひ弱に見えるのか」と思いかねません。では、どう通訳すればよいのでしょう。その状況次第ですが、例えば夕方の場合でしたら、「It must have been a long day for you」などというほうが適切です。長旅の後ですと、場合によっては、「I hope you had a pleasant flight」などが適切でしょう。あるいは相手がすでに日本で何日か滞在しているならば、「I hope you are enjoying your stay」などと言うのがふさわしい場合もあるでしょう。

ここでは3点だけとりあげましたが、他にも通訳で重要となる言語文化的な問題があります。異文化コミュニケーションということを意識しながら通訳技術の習得を目指しましょう。

知識と語彙の増強

通訳のクライアントが何らかの分野の専門家である場合は、通訳者が完璧な英語運用能力があっても受注した通訳案件の分野の知識を持ち合わせていなければ、きちんとした通訳はできません。どうすれば良いでしょうか

対応策は2つあります。1つは、受注してから通訳当日までの間にその仕事で必要となる知識・語彙を学習するということです。人間は不完全であり、あらゆる分野の知識・語彙をすべて持ち合わせている人はいません。そこで、専門的な分野での通訳をする前には、そういった詰め込み学習が必要となる場合は多いのです。

対応策の2つ目は、受注した仕事とは別に、普段から各種分野の知識・語彙を積み上げる努力をするということです。どのような分野の通訳案件がいつ入ってくるか分かりません。また、特に専門性の高い会議などの通訳でない場合でも、上の「日本語運用能力」の部分で言及したように、話者が突然、専門用語を使うかもしれません。普段から可能な限り、様々な分野の勉強をしておくのに越したことはありません。

その際、知識と語彙は同時に学んでいけばいいですね。例えば、「低炭素社会(low-carbon society)」や「低炭素経済(low-carbon economy)という表現を学ぶときに、それに関連する用語(「脱炭素経済」[decarbonized economy]」や「カーボンニュートラル」[carbon neutral]」や「太陽光発電[装置][photovoltaics]」など)を確認するだけでなく、低炭素社会へ向かうための各国の様々な取り組みや、新たなテクノロジーの仕組み、なども勉強できます。

どうすれば効率よく様々な分野の知識・語彙を増強できるでしょうか。人ぞれぞれですが、私には、次の2つの方法が有益です。

(1)1つの分野(例えば、国際関係、軍事、医療、環境、ビジネス、テック)について12週間単位で集中的に勉強します。具体的には、インターネットなどを活用して学習すればいいですね。例えば、百科事典や辞書(RNN時事英語辞典英辞郎など)を利用して、自分が使いやすい英日の語彙リストを作ります(Excelでどんどん入力して後でA~Z並べ替え)。また、当然のことながら、Googleなどで検索をして用語・表現を調べることは大変有効ですね。さらに、大抵の国内・海外メディアのウエブサイトではニュースが分野別に整理されていますので、個々の分野の記事を集中的に読んで学習できます。

(2)普段から単語・語句に訳をつけることを心がけます。日常生活の中で目に付いた単語・語句で、すぐに日本語(英語)に訳せない単語があれば、これは日本語(英語)でどう言えばよいのだろうと調べます。これは、専門用語かそうでないかは度外視してやります。例えば、次の単語・語句は、日本語(英語)でどう言うのでしょう。

  • check-point
  • drug addict
  • chemical dependency
  • child abuse
  • geopolitical tension
  • ヨウ素剤
  • 利回り
  • アフリカ豚コレラ
  • 業務上過失致死傷
  • 洋上風力発電所

では訳例です。

  • 検問所
  • 麻薬常習者
  • 薬物依存
  • 児童虐待
  • 地政学的緊張
  • iodine tablets
  • yield (rate)
  • African swine {hog} cholera
  • professional negligence resulting in death and injury
  • offshore wind farm

的を絞って学習する方法を2つ紹介しましたが、これとは別に、とにかくニュース記事は毎日読み、毎日聞くようにしましょう。そうすれば、通訳者が常に心がけるべき、英日両言語の運用能力の向上と一般的な知識・語彙の増強が促進されます。

結び

今回の記事では、通訳技術習得に必要な英語と日本語の基本的な運用能力、異文化理解、様々な知識・語彙の重要性などを見てきました。

次回の記事からは、通訳の具体的な練習方法を紹介していきます。通訳練習法の1つ目は「発音トレーニング」です。こちら ⇩ をご覧ください。

お勧めの読みもの

補足として、通訳に関心がある人なら、読む価値のある本をいくつかお勧めします。まずは『英語通訳への道―通訳教本』です。この本は、日本における通訳の成り立ちの経緯、逐次通訳・同時通訳の練習方法、練習教材などを含みます。非常に興味深いです。この本を使って本気で通訳の練習をすれば、ある程度通訳技術が身につくでしょう。また技術向上のための練習方法が分かりますので、自分で、どんどん練習を重ねていくことが可能になります。

次に、日本における会議通訳者(同時通訳者)の草分け的存在の1人として知られる小松 達也さんの『通訳の技術』をご紹介します。通訳者及び通訳養成者としての長年の経験をもとに、通訳者になるための勉強法、通訳の技術や現実について書かれています。

会議通訳を目指す人の必読書本として、ご紹介したいのは、ダニッツァ・セレスコヴィッチ ()会議通訳者:国際会議における通訳』(ベルジュロ伊藤宏美=訳)です。原書は1968年にベテラン通訳者が発表したもので、それまで、とかく通訳は言葉を訳すものと考えられていたのに対して、「通訳は言葉ではなく話し手の伝えようとする意味を捉え、それを通訳者自身の言葉で表現するもの」という基本的理念を提示しました。通訳関係書のなかで古典として広く知られています。

次は、 法律、政治経済、スポーツ など様々な分野で活躍する同時通訳者である関根マイクさんの本を2つご紹介します。まず、『同時通訳者のここだけの話』は通訳の舞台裏、ハプニング、人間模様等、同時通訳者ならではのエピソードもたくさん含まれて、通訳を行う上での心構えについて大変参考になるでしょう。2つ目は『通訳というおしごと』で、通訳者になるには、仕事を得るには、通訳という仕事に必要なスキルと心構えとは、等が分かりやすく書かれています。

次に、ピンカートン曄子さんと篠田顕子さん共著『実践英語スピーチ通訳 式辞あいさつからビジネス場面まで』です。かしこまった式辞でのあいさつやビジネスの場面でのスピーチなどの通訳に役立ちます。

また、気軽に楽しく読める本として、「ミスター同時通訳」と言われた村松増美さんの著書を、つご紹介します。まず『私も英語が話せなかった』です。村松氏は、主要先進国サミットなどの国際会議や各国のリーダーらの通訳などを担当した、まさに第一線の同時通訳者でした。通訳現場で修羅場をくぐり抜けた村松氏の話は通訳を目指す人には大変有益です。2つ目は『とっておきの英語―第一線同時通訳者の秘蔵話』です。気軽に楽しく読めますが、それでいて、通訳技術向上に必要な心構えや意識を養う内容が満載です。勉強をする気になれないときなど頭を休めながら同時に学べます。

最後に、身近な日本語ながら、英語で言うのが難しいかもしれない語彙(数・図形、決まり文句、食物、四字熟語、日本文化特有のもの、等)がたくさん掲載されている『これを英語で言えますか?―学校で教えてくれない身近な英単語』も大変有益でしょう。

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