通訳訓練(6)要訳(要約) — Summary Interpreting

通訳・翻訳
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今回は、要訳(要約)という通訳訓練法を見ていきます。

要訳(要約)訓練とは

要訳訓練は、発話者の発言を要約しながら訳出するというものです。

訳をする前の段階の訓練として、元発言の言語で要旨をまとめる練習をするほうが良いという見方もありますが、ここでは要旨を訳す練習に焦点を絞っていきます。

本来、通訳は元発言を端折らずに忠実に訳出しますが、下のような目的・効果を念頭に要訳の練習をします。

目的・効果

要訳訓練の目的と効果として、次のようなことが言えます。

(1)通訳するときは、逐次でも同時でも、発話者の発言の文脈を把握して通訳することが重要です。元発言の論旨の流れをとらえることができずに、表面的な言葉(言葉の字面)に気を取られていると、適切な通訳にはならないことがあります。例えば、発言に含まれている言葉(単語や語句)はすべて訳出していたとしても、発話者が伝えたいポイントが通訳を聞いているクライアントに伝わらないということも往々にしてあるのです。細部にこだわり過ぎ「木をみて森を見ず」ということにならないように、発言の要旨を把握して、うまくまとめて訳す技術を要訳訓練で身に付けます。

(2)基本的には通訳者は元発言を忠実に訳すのであり、通訳に要する時間は発話者が費やす時間とほぼ同じです。しかし、実際に通訳するときには様々な現場や状況があり、例えば発話者の発言時間よりも短い時間での簡潔な逐次通訳を求められる場合があります。そのような時は、どの情報を削り、どの情報を優先するかを判断して、重要な情報を簡潔に通訳する必要があります。要訳訓練をすれば、情報価値が高いと思われる部分を抽出し訳出する技術を養成できます。

(3)通訳付きで話したり、人前で話すことに慣れていない発話者は、何度も同じ部分や文言を繰り返したり、話の筋が右往左往したりすることもあります。逐次であれ、同時であれ、そのような発話者の通訳をする時は、聞いている人に発話の内容が伝わりやすいように話を整理して訳す必要も生じます。そういった通訳をするためには、発言の字面を離れて、発話者が本当に伝えたい内容を聞き手に理解しやすいように表現しなおす技術を養成しなければいけません。要訳訓練をすると、こういった技術も養えます。

(4)同時通訳で、発話者の話すスピードが極端に速くてついて行くのが困難であるとか、あるいは、発話者の使った表現(発話者の言語での独特の表現等)や専門用語などを、言葉を加えて説明をする必要があるなどの理由で、通訳が発言に遅れつつある場合など、追いつくために、要訳をせざるを得ないことがあります。要訳訓練をすると、こういった状況にも対応できるようになります。

要訳練習

ここでは、英日の要訳練習だけを扱いますが、日英要訳練習も同じ要領ですればよいでしょう。

要訳練習のやり方は、2つあります。

(1)原文を読んで要訳する練習

(2)音源を聞いて要訳する練習

いずれの場合も、要訳の長さは元発言の50%程度を目安にし、実際の通訳と同じように聴衆に話しかけるような言葉遣い・口調で話します。

もしも(1)はせずに(2)から始めるのでしたら、「聞いて要訳する練習」に進みましょう。

読んで要訳する練習

3つのステップから成る練習をします。

Step 1

下の英文は、オバマ大統領が2015年に気候変動コペンハーゲン会議で行ったスピーチ(American Rhetoric)の冒頭部分です。これを読みながら、この原文の中で重要だと思われる語句に下線を引きます。実際にこの英文を使って練習をされるのでしたら、ご自分のパソコンやスマホにコピーしたり、印刷したりして下線を引いてください。

Good morning. It is an honor for me to join this distinguished group of leaders from nations around the world. We come here in Copenhagen because climate change poses a grave and growing danger to our people. All of you would not be here unless you — like me — were convinced that this danger is real. This is not fiction, it is science. Unchecked, climate change will pose unacceptable risks to our security, our economies, and our planet. This much we know. The question, then, before us is no longer the nature of the challenge. The question is our capacity to meet it. For while the reality of climate change is not in doubt, I have to be honest, as the world watches us today, I think our ability to take collective action is in doubt right now, and it hangs in the balance. I believe we can act boldly, and decisively, in the face of a common threat. That’s why I come here today — not to talk, but to act. 

いかがでしたか。

Step 2

同じ英文を再度読みます。一度読んで把握したこの英文の意味内容から判断して、情報価値が高いと思う語句にしるしを付けていきます。色を付けても、まるで囲っても、どんなしるしでも構いません。先ほど下線を引いたのでそれ以外のしるしを付けます。

おそらく、下線は引いたが、この再読ではしるしを付ける必要はないと判断する部分もあると思います。

それでは、Step 2 を始めましょう。

ご参考までに、私なりにStep 1 と Step 2 のしるしを付けた例が下にあります。これは単なる一例です。こうでなければいけないというようなものでは、ありません。

Step 3

Step 2 でしるしを付けた部分をつないでいけば、原文の大意要約がほぼ出来上がります。それを、日本語でしゃべってみましょう。この時重要なことは、あたかも通訳をしているように、聴衆に話しかける口調でしゃべるということです。

要訳の長さは、45秒くらいを目指しましょう。スピーチ音源は後程聞きますが、ここに取り上げている部分は90秒ほどですので、要訳が45秒くらいですと、ちょうど、要訳訓練で目安としている50%の分量になります。もちろん、それよりも少々長くても短くても構いません。

では、始めましょう。

* * * * *

いかがでしたか。

要訳例

私の要訳例を下に書きます。これをややゆっくり目に読むと約40秒程度です。

皆さん方、世界の指導者とご一緒できて光栄です。コペンハーゲンに集まったのは、気候変動が危険だからです。ご存知のように、この危険は現実のもので科学に基づいています。気候変動は、安全保障、経済、地球を脅かすものだと我々は分かっています。不明なのは、この挑戦を我々が受けて立てるかどうか、力を合わせて行動できるかどうかです。私は、我々が大胆に行動できると信じており、行動するために、ここに来ました。

ここまで、スピーチの冒頭部分を使って要訳練習をしましたが、続きの部分にも取り組まれるのでしたら、こちらにスピーチの全文があります。

聞いて要訳する練習

ここからは、元発話(上で使ったオバマ大統領のスピーチ)の録音音源を聞いて要訳する練習をします。練習の手順は次の通りです。

(1)下にある音声再生ボタンを押してスピーチの音源を再生します。聞くときには通訳メモ(note-taking)を取ります。この練習では、要旨を訳出しますので、メモもそれを念頭において、重要だと思われる情報を中心に書き留めていきます。

通訳メモの取り方は、こちらで説明しています。

(2)ここで使っているスピーチの冒頭部分(最初の90秒程度)が最後まで来たら、音源を止めます。そして、メモを見ながら、発言の大意要約を日本語で訳出します。通訳しているつもりで、クライアント(聴衆)に話しかけるようにしゃべります。

ちなみに、発言を聞きながら通訳メモを取るという(1)の作業は、上の「読んで要訳する練習」の Step 1 に相当します。つまり、「読む」と「聞く」との違い、及び「下線を引く」と「メモに取る」との違いはありますが、元発話の中で重要と思われる部分と他の部分を見極めるというプロセスが共通しています。

通訳メモを見ながら要約を訳出する(2)の作業は Step 2 及び Step 3 で行う作業に相当します。訳出する段階では、すでに元発話を聞き終えて全体の意味内容が分かっており、それに基づいて、手元にあるメモを見ながら情報価値の高い部分を選んで(Step 2のしるしを付ける作業に相当)要約を頭の中でまとめながら訳出する(Step 3に相当)ことになります。

それでは、音源を再生して、メモを取りながら聞きましょう。

冒頭部分の要訳例は上にあります。

いかがでしたでしょうか。

以上の要領で、続きの部分にも取り組んでみましょう。

教材

要訳訓練に使う教材に関しては、どんなものを使ってもかまわないのですが、ヒントをご所望でしたら、こちらをご覧ください。

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★ 今回は、通訳訓練の6つ目、要訳(summary interpreting)をご紹介しました。

★ どのような訓練でも同じことですが、長時間の訓練を時々するというよりも、短時間の訓練を頻繁にするのが効果的です。

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★ 通訳に関心がある人にとって読む価値のある本を、こちらで ⇩ 紹介しています。

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