「英語のニュースを読むコツ」シリーズにようこそ。今回は、「under fire」という表現に注目します。
意味
この表現には、2つの主な意味があります。1つは文字通りの意味、もう1つは比喩的な意味で、後者のほうが日常的によく使われます。
文字通りの意味
元々は、戦闘や戦争で銃や大砲による攻撃にさらされることを指します。例えば、戦場では、兵士らは敵からの銃火の下(under fire)前進を続けるという状況もあります。また、何時間も銃火にさらされ(under fire)、前進も後退もできない場合もあるでしょう。
(ところで、おわかりのように、ここでの「fire」は銃火や砲火という意味であり、「火事」という意味ではありませんね。「火事」を指す場合はその前に使われる前置詞は「under」ではなく「on」ですね。[例:The 19-year-old … woke up in October last year to find his house was on fire before escaping. Chronicle Live, Feb. 2, 2017])
比喩的な意味
比喩的に「under fire」が使われると、特に公の場で、メディア、同僚、または世間から激しい批判、厳しい監視、または追及にさらされることを意味します。例えば、会社が、顧客からの苦情への対応の悪さで批判を浴びる(under fire)もあるでしょうし、政権が公約を果たせなかったことで非難される(under fire)こともあります。人種差別的な発言をした政治家が、メディアや一般市民から非難の集中砲火を浴び(under fire)たりもします。社会を騒がせた会社のCEOが、記者会見で、多くの記者から厳しい質問攻めにあう(under fire from many journalists)こともありますね。
このように、誰か(あるいは組織)が「under fire」の状態にある場合、それは兵士が攻撃にさらされるように、厳しい批判、プレッシャー、または精査に直面していることを示唆しています。この表現は、単なる意見の相違ではなく、強い批判や非難にさらされている、かなり厳しい状況を表す際に使用されます。
「Under Scrutiny」との違い
今回取り上げた表現とよく似た表現に、「under scrutiny」、「under the microscope」、「under investigation」があります。これらについては、こちらの記事でご紹介していますが、ここでは、「under fire」と「under scrutiny」の違いについて少し確認しましょう。
「Under fire」はすでに、激しい非難・攻撃を受けている状態を指し、そのニュアンスは感情的で敵対的、すでに「責められている」状況を示します。
それに対して、「under scrutiny」は 詳細に調査・精査されている状態を指し、そのニュアンスは中立的または分析的です。必ずしも責められているわけではなく、まだ調べられている段階を示します。調査の結果、問題が出てくる可能性はあるものの、まだ調べられている段階だというニュアンスがあります。
「Under Fire」の使用例
では「under fire」の実際の使用例を見ていきましょう。まず、文字通りの意味での使用例、次に、比喩的な用法での使用例です。(参考のために添える和訳はニュースの提供元ではなくこのサイトの運営者が作成したものです。)
文字通りの意味での使用例
Ex-Officer Says He Believed Police Were Under Fire During Deadly Breonna Taylor Raid
Former Louisville police officer Brett Hankison testified Monday to a federal jury that he felt the percussion from a gunshot fired at officers before they opened fire, killing Breonna Taylor in her hallway. (Monday, October 28, 2024, AP)
元警官「警察は銃撃を受けていると思った」ブリオナ・テイラー死亡の強制捜査で
ルイビル警察の元警官ブレット・ハンキソン氏は月曜日、連邦陪審に対し、警官に向けて発砲された銃弾の衝撃を感じ、その後警官らが発砲し、廊下にいたブリオナ・テイラーさんを死亡させたと証言した。(2024年10月28日、月曜日、AP通信)
‘We will be betrayed’: cold, fearful and still under fire, Gaza’s people wait
Palestinians describe grief and anxiety as they seek news that the ceasefire is going ahead, and airstrikes continue. (Friday, January 17, 2025, The Guardian)
「私たちは裏切られるだろう」――冷たく、恐怖におびえ、なおも砲火の下にあるガザの人々
パレスチナ人たちは、停戦が実施されるという知らせを待ちながら、空爆が続く中で、悲しみと不安を語っている。(2025年1月17日、金曜日、ガーディアン紙)
Volodymyr Zelenskyy says Ukrainian troops remain under fire in Russian border regions despite Vladimir Putin’s ‘Easter truce’. (Sunday, April 20, 2025, The Guardian)
ウクライナのゼレンスキー大統領は、プーチン大統領が「復活祭の一時停戦」を宣言したにもかかわらず、ウクライナ軍はロシア国境地域で依然として砲火にさらされていると発言している。(2025年4月20日、日曜日、ガーディアン紙)
Ukraine’s energy minister said Russia was bombarding the power sector, without specifying which cities were under fire. (Wednesday, December 25, 2024, The Guardian)
ウクライナのエネルギー相は、ロシアが電力部門に砲撃を加えていると述べたが、どの都市が砲火にさらされているかは明らかにしなかった。(2024年12月25日、水曜日、ガーディアン紙)
比喩的な意味での使用例
Soccer — Saudi Arabia’s Human Rights Record Under Fire After World Cup Bid Win
Rights organisations strongly criticised FIFA on Wednesday after world soccer’s ruling body officially awarded the 2034 men’s World Cup to Saudi Arabia. (Wednesday, December 11, 2024, Reuters)
サッカーW杯招致成功でサウジアラビアの人権状況に非難集中
国際サッカー連盟(FIFA)が2034年男子ワールドカップの開催国を正式にサウジアラビアに決定したことを受け、人権団体は水曜日、FIFAを強く批判した。(2024年12月11日、水曜日、ロイター通信)
Puerto Rico Governor Under Fire as Federal Funds for Solar Projects Are Stalled
Puerto Rico’s governor came under fire Tuesday as her pledge to support the investment of millions of federal dollars in solar projects across the U.S. territory appeared to fade. (Tuesday, May 6, 2025, AP)
プエルトリコ知事、連邦資金による太陽光発電事業停滞で非難浴びる
プエルトリコの知事は火曜日、この米領内で数百万ドル規模の連邦資金を太陽光発電プロジェクトに投資するとした公約が後退しているとして非難を浴びた。(2025年5月6日、火曜日、AP通信)
US Renewable Power Transmission Project Under Fire From Farmers
U.S. farmers on Tuesday slammed a project that got an up-to $4.9 billion loan guarantee from former President Joe Biden’s administration to transmit electricity from wind and solar farms in the Midwest to cities. (Tuesday, July 15, 2025, Reuters)
米再生可能エネルギー送電プロジェクト、農家から批判
バイデン前大統領政権から最大49億ドルの融資保証を受け、中西部の風力・太陽光発電所から都市部に電力を送る計画を米国の農家らは火曜日、強く非難した。(2025年7月15日、火曜日、ロイター通信)
‘We didn’t vote for ChatGPT’: Swedish PM under fire for using AI in role
The Swedish prime minister, Ulf Kristersson, has come under fire after admitting that he regularly consults AI tools for a second opinion in his role running the country. (Tuesday, August 5, 2025, The Guardian)
「我々はChatGPTに投票していない」:スウェーデン首相、AI利用で批判浴びる
スウェーデンのウルフ・クリステション首相は、国政運営においてセカンドオピニオンを得るためにAIツールを日常的に利用していることを認めた後、非難を浴びた。(2025年8月5日、火曜日、ガーディアン紙)
Corporate diversity policies are under fire from the right – but also from the left
Diversity, equity and inclusion (DEI) initiatives have come under fire from both sides of the Atlantic. They have been defunded by the Trump administration and in Britain Reform UK has vowed to scrap them in the nine councils it won control of in this month’s local elections. But criticism of such initiatives – designed to promote equality of opportunity and representation within organisations – has not been exclusive to the right. Leftwing academics, writers and organisers have criticised what they describe as the shallow corporate exercises that have come to define DEI. (Monday, May 26, 2025, The Guardian)
企業の多様性政策、右派だけでなく左派からも批判
多様性・公平性・包括性(DEI)を掲げた取り組みは、大西洋の両岸で非難の対象となっている。アメリカではトランプ政権によって資金を打ち切られ、イギリスでは改革党が今月の地方選挙で政権を握った9つの議会で、それらの取り組みを廃止すると公約した。しかし、組織内での機会均等と公平な代表性を促進するために考案されたこれらの取り組みに対する批判は、右派に限られたものではない。左派の学者、作家、活動家たちは、DEIを特徴づけるようになった浅薄な企業活動であるとして批判している。(2025年5月26日、月曜日、ガーディアン紙)
まとめ
今回は、「under fire」という表現を取り上げ、文字通りの意味(銃火・砲火にさらされている)と比喩的な意味(非難を浴びている)を見てきました。
どちらも、本文および見出しで、頻繁に使われます。
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★ 見出しでよく使われる単語や表現はこちら⬇でまとめてご紹介していますので、ご興味があれば、ご覧ください。