IELTSとは
IELTS(International English Language Testing System[アイエルツ]) は、ブリティッシュ・カウンシル、IDP、およびケンブリッジ大学出版局 & アセスメントが共同所有する世界最大級の受験者数を誇る英語4技能運用能力評価試験です。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダを含む英語圏の国への留学や移住、あるいは、そういった国での就労を希望する人々の英語力を測定する英語試験です。
ブリティッシュ・カウンシルによると、「IELTSは、英語能力を証明する試験として、世界の140ヵ国以上、12,000以上の機関に採用されています。アメリカだけでも政府や教育機関、企業など3,400を超える機関が採用している英語テスト」だとのことです。
所有母体について
ブリティッシュ・カウンシル(British Council)は、文化交流と教育機会を促進する英国の国際機関で1934年に設立されました。芸術・文化、英語、教育、市民社会の分野で、世界100カ国以上と連携しています。
IDP (International Education Specialists)はオーストラリアを拠点とし、国際教育サービスを展開する会社で、主な活動は、世界中の適切な学生と大学、カレッジ、学校をマッチングすること、IELTSの配布と管理、英語教育サービスの提供などです。
ケンブリッジ大学出版局 & アセスメント(Cambridge University Press & Assessment)は、ケンブリッジ大学の一員として研究、学術出版、各国の教育システム、国際教育、そして英語学習の分野で豊富な経験を活かして国際的な活動を展開しています。
IELTSの概要・種類
IELTSのテスト概要
下でご紹介する「IELTS Life Skills 」だけは例外ですが、IELTSには、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つのテストが含まれ、4つのテストの合計所要時間は約2時間45分です。
IELTSには、いわゆる通常のIELTSに加えて「IELTS for UKVI」と呼ばれるものがあります。
IELTS for UKVI に関しては、下の「ビザ申請のための政府認証テスト(ELTS for UKVI)」の部分をご覧ください。
IELTSのテスト会場と日程は、こちら及びこちらから確認できます。
テスト結果は、合格、不合格ではなく、1.0から9.0のバンドスコアで示されます。具体的には、ライティング、リスニング、リーディング、スピーキングのそれぞれのテストのスコア、及び総合評価スコアが示されます。
受験料については、下の「ELTSを日本で受験」をご覧ください。
テスト内容と種別
IELTSは、テストの内容に基づいて区別すると、「アカデミック・モジュール」と「ジェネラル・トレーニング・モジュール」という2つのモジュールに種別されます。この2つのモジュールの違いは、リーディングとライティングにおける出題内容です。リスニングとスピーキングのテストに関しては、どちらのモジュールでも共通の問題が出題されます。
アカデミック・モジュール(Academic Module )
アカデミック・モジュールは、英語で授業を行う大学や大学院に入学できる英語運用能力を有しているかどうかを評価するもので、この目的に沿った内容の問題が出題されます。
具体的には、リーディングの問題は、書籍、学術誌、雑誌、新聞などから抜粋した文章を用いて出題され、多肢選択式の質問、情報の特定、筆者の見解や主張の特定、情報の照合、見出しの照合、特徴の照合、文末の照合、文の補完、要約の補完、メモの補完、表の補完、フローチャートの補完、図のラベルの補完、短答式の質問など、様々な課題が出題されます。
ライティングの問題は2題あり、タスク1では、視覚的な情報(グラフ、表、チャート、ダイアグラムなど)について説明するよう求められ、20分程度で150語を書く必要があります。タスク2では、提示された見解、議論、または問題について、約40分の間に250語で回答する必要があります。
リスニングテストの問題は、アカデミックとジェネラル・トレーニングに共通の内容で、さまざまなネイティブスピーカーの2つの会話 と2つのモノローグ(一人の人が何かについて説明したりや意見を述べているもの)とで構成されています。この合計4つの音源を聞いて、40問に解答します。具体的には、
音声1 :日常生活の中で交わされる2人の人物の会話
音声2:地域の施設に関する説明など、日常生活の中でのモノローグ
音声3:大学の指導教員と学生との課題に関する話し合いなど、教育または研修場面で交わされる最大4人の会話
音声4:大学の講義など、学術的なテーマに関するモノローグ
スピーキングの問題は、アカデミックとジェネラル・トレーニングで共通の内容で、認定試験官とのディスカッションを行います。インタラクティブで、実際の状況に近いテストです。
テストは3つのパートに分かれており、各パートは、インタラクション・パターン、タスクの入力、そして受験者のアウトプットという点で、それぞれ特定の機能を果たします。
パート1では、自分自身と家族に関する質問に答えます。パート2では、あるトピックについてスピーキングを行います。パート3では、そのトピックについてより長いディスカッションを行います。
アカデミック・モジュールの例題がIELTSのホームページにあります。こちらです。
ジェネラル・トレーニング・モジュール(General Training Module)
ジェネラル・トレーニング・モジュールは、英語圏で学業以外の研修を考えている場合や、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドへの移住申請をする際に受験すべき英語運用能力試験とされています。
具体的には、リーディングの問題は、3つのセクションに分かれています。セクション1には、短い文章が2つ〜3つ、あるいはそれ以上、含まれます。セクション2には2つの文章が含まれます。セクション2には、1つの長い文章が含まれます。
セクション1の文章は日常的な話題を扱っており、英語圏の国で生活する際に理解する必要がある類の文章です。例えば、掲示物、広告、時刻表などから重要な情報を見つけ出す必要があります。セクション2の文章は、職務内容、契約、人材育成、研修資料など、仕事に関する話題に焦点を当てています。セクション3の文章は、一般的な関心事に関する話題を扱っています。セクション3の文体は、何かを記述する文章であったり、何かを行う方法を説明する文章などです。セクション3の文章は、セクション1と2の文章よりも長く、より複雑で、新聞、雑誌、書籍、ウエブサイトなどから出題されます。
多肢選択問題、情報の特定、筆者の見解/主張の特定、情報の一致、見出しの一致、特徴の一致、文末の一致、文の完成、要約の完成、メモの完成、表の完成、フローチャートの完成、図のラベルの完成、短答問題など、さまざまなタスクが出題されます。
ライティングの問題は、150語と250語の2つのライティング・タスクで構成されています。
タスク1では、ある状況に関して、情報を請求したり、状況を説明したりする手紙を書くことが求められます。
タスク2では、提示された見解、議論、または問題に対する回答として文章を書くことが求められます。
リスニングとスピーキングのテストに関しては、上のアカデミック・モジュールをご覧ください。
ジェネラル・トレーニング・モジュールの例題がIELTSのホームページにあります。こちらです。
受験方式の種別
IELTSは、受験方式に基づくと、ペーパー版、コンピューター版、およびオンライン版に分けられます。ここで、それぞれの特徴や長所・短所を考えてみましょう。
IELTSペーパー版(IELTS on Paper)
ペーパーでの受験は、紙とボールペンを使った試験です。パソコンが苦手であれば、ペーパー版のほうが向いているでしょう。
テストの内容、4つの各セクションの内容や採点方法、受験料などはコンピュータ版と全く同じです。
ライティング、リーディング、リスニングの各セクションの解答はペンで解答用紙に記入します。問題用紙に線を引いたり、メモを書き込んだりすることもできます。
ペーパー版では、ライティング、リーディング、リスニングのテストは同じ日に、この順に実施されます。各セクションの間に休憩時間はありません。スピーキングテストは、筆記テストの前後6日以内に行われます。
スピーキングテストは、IELTS試験官との1対1の対面式面接形式で、所要時間は11~14分です。
2025年5月1日以降に開催されているIELTSペーパー版の試験においては、IELTSグローバル規定の変更により、試験で使用できる筆記用具はボールペンのみに統一されています。受験者が使用するボールペンは、テストセンターが配布するものにかぎられ、筆記用具を試験教室に持ち込むことはできません。
試験結果は試験後から13日後に分かります。
IELTSコンピューター版(IELTS on Computer)
リーディング、リスニング、ライティングのテストをコンピュータで行います。解答はすべて画面にキーボード入力することになります。
スピーキングは、ペーパー版と同じように、IELTS試験官との対面式面接形式で実施されます。ただし、コンピューター版ではスピーキングが他の3つのテストと同じ日に行われます。そのタイミングは、リーディング、リスニング、ライティングの3つのテストの直前または直後です。
リスニングテストでは専用のヘッドフォンが用意されています。ヘッドフォンを使うので、周囲のざわつきで気が散ったり、必要な部分が聞き取れなかったりする可能性が低く、意識集中しやすいかもしれません。
コンピューターの扱いに慣れているのであれば、コンピューターでの入力作業も素早くできるため、手書きで解答するよりも時間短縮になるでしょうし、修正も、タイピングのほうが素早くできるでしょう。さらに、コンピューターに文字数カウントの機能が付いているため、わざわざ文字数を数える手間も省けます。また、画面上に残り時間が表示されるため時間配分がしやすいでしょう。
コンピューター版の成績結果は1~5営業日以内にWEBで公開されます。
IELTSオンライン版(IELTS Online)
オンライン版は日本ではIDPを通して受験可能となっています。これは、IELTSのアカデミック・モジュールがオンラインで受験できる制度で、安定したインターネット接続環境があり、集中して受験できる場所であれば、どこから(例えば自宅など)でも受験できます。ただし、オンライン受験に用いる端末がIELTS Onlineと互換性のあるシステムであることを事前に確認する必要があります。
くわしくは、こちらをご覧ください。
また、テストを予約する前に、結果の提出先機関に問い合わせて、オンライン版のテスト結果を受け入れているかどうかを確認すべきでしょう。例えば、ビザ移民局ではIELTSオンライン版を受け入れていません。
試験内容は、テストセンターで受験するアカデミック・モジュールのペーパー版やコンピューター版と同じです。ただし、スピーキングテストはIELTS試験官とビデオ通話で行います。
申し込みには、有効期限内のパスポートが必要です。
試験結果(スコア)は試験後3~6日にオンラインで確認できます。紙の成績証明書は発行されません。 大学などの機関側も、電子送信で結果を確認することになっています。
ビザ申請のための政府認証テスト(ELTS for UKVI)
これは、 英国ビザ申請に必要な、英国政府が認めた英語能力証明テストです。IELTS for UKVIはコンピューター試験のみで提供されています。
IELTS for UKVIと一般のIELTS の重要な区別は、IELTS for UKVIが英国ビザ移民局(UK Visas and Immigration)が認可したテストセンターで実施されるということです。そして、IELTS for UKVIの成績証明書には、英国ビザ移民局が認可したテストセンターで受験したことが記載されます。さらに、試験会場の様子は録画されており、英国ビザ移民局の要請により録画が提出されることもあります。
IELTS for UKVIのテスト種別については、まず、一般のIELTSと同じように、 アカデミック・モジュールおよび ジェネラル・トレーニング・モジュールがあります。この2つのモジュールのテスト内容や形式、難易度、採点方法は一般のIELTSと同じで、違いはありません。これらに加えて、Life Skills A1およびLife Skills B1と呼ばれるテストがあります。下に、まとめます。
IELTS for UKVI アカデミック・モジュール
すでに上で確認しましたように、英国の学士および修士学位取得のための留学、もしくは就労を目的とする場合に必要となるテストです。
IELTS for UKVI ジェネラル・トレーニング・モジュール
英国へ移住する、もしくは学士号未満の職業訓練や勉強をする場合に必要となるテストです。
IELTS for UKVI Life Skills A1
扶養家族向けビザ、配偶者ビザおよびパートナービザの申請においてスピーキングとリスニングの英語能力の証明が必要な場合のテストです。試験時間は16分から18分程度です。A1とは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)におけるレベルで、National Qualification Framework(NQF)のESOL Entry 1に相当します 。
IELTS for UKVI Life Skills B1
永住権および市民権の申請においてスピーキングとリスニングの英語能力の証明が必要な場合のテストです。試験時間は22分程度です。B1とは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)におけるレベルで、National Qualification Framework(NQF)のESOL Entry3 に相当します。
留学のためのIELTS
当該の留学希望校のウエブサイトで確認すべきですが、基本的には、アカデミック・モジュールを選ぶことになるでしょう。
また、IELTS for UKVIのアカデミック・モジュールは、大抵の大学で受け入れられますが、あえてそちらを選ぶ必要はないという状況です(費用も高いですし受験会場も比較的限られています)。
大学の入学に必要なスコアは、それぞれの大学が設定しているので、出願先の条件を確認する必要がありますが、総合スコア6.0 〜 6.5以上を入学基準としている大学が多いと思います。また、4技能(ライティング、リーディング、リスニング、スピーキング)の個々のテストの受け入れ可能最低スコアを設定している大学もあります。
具体例として英国の2校の2025年5月現時点の、必要とされる英語運用能力基準(English language requirements)をご紹介します。
総合スコア:6.0
個々のテスト:5.5 以上
University College London (UCL), University of London(大学院)
専攻科目によって基準が異なります。一例として、Linguistics MAを見ます。
総合スコア:7.0
個々のテスト:6.5 以上
総合スコア:6.5
個々のテスト:5.5以上
専攻科目によって基準が異なります。一例として、Language and Linguistics MAを見てみましょう。
総合スコア:6.5
個々のテスト:Reading & Writing: 6.5以上; Listening & Speaking: 6.0以上
ELTSを日本で受験
日本では、IELTS公式テストを日本英語検定協会と一般財団法人日本スタディ・アブロード・ファンデーション(JSAF: ジェイサフ)が運営しており、どちらで受験するかで日程やテスト会場が異なります。
日本英語検定協会は、2010年よりブリティッシュ・カウンシルと日本でのIELTSを共同運営し、それに加えて2022年からはバークレーハウスが英検協会のサブセンターとして提携を開始しました。
日本スタディ・アブロード・ファンデーションは、IDP よりIELTS公式テストセンターとして認可を受けてテストの運営をしています。
受験料は、テストの運営団体によって若干の差があります。また、運営団体独自が提供する特典も違います。テストの内容などに違いはありません。また、ペーパー版とコンピューター版の間に受験料の違いはありません。具体的な受験料は下をご覧ください。
- 通常のIELTS:25,380円(税込み)
- IELTS for UKVI (Academic・General) ・・・ 29,400円(税込)
- IELTS Life Skills (A1・B1) ・・・ 20,500円 (税込)
- 通常のIELTS:27,500円(税込み)
- IELTS for UKVI:31,900円(税込み)
- オンライン版(IELTS Online):US$211.22(2024年4月8日現在)
IELTS準備・対策
インターネット上で様々な対策用教材が提供されています。まずは、IELTSのホームにあるテスト準備サポートページをご覧になることをおすすめします。このページには多くの有益なリンクが貼ってあります。
また、IELTSのホームから3つの所有母体へのリンクも貼ってあり、それぞれのウエブサイトでは、IELTS受験を目指す人を後押しする情報や練習問題などが提供されています。例えば次のようなウエブページは非常に有益でしょう。
また、対策教材を入手して使うという方法も良いでしょう。その際は、上で確認したIELTSの所有母体が提供する教材を使うのが効果的だという考え方もあります。
例えば、ブリティッシュ・カウンシル公認のIELTS問題集は、その一つです。これは、IELTSのアカデミック・モジュールに対応し、「4技能の完全対策+模擬試験」の構成の総合対策本です。リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの出題形式、テストの流れ、評価基準、攻略法、そして豊富な練習問題が掲載されていて、模擬試験では、本番と同じ形式の模試1回分が掲載され、切り離して使える解答用紙もついています。また、音声無料ダウンロード、IELTSの公式情報、学習アドバイス、すべての問題・解答に対訳とスクリプトがついています。
次にご紹介するのは、もう一つの共同所有母体であるIDP によるIELTS公認問題集です。アカデミック・モジュールに特化し、完全模試を2回分収録しています。4技能それぞれに関して、出題形式、スコアUPに役立つポイントを丁寧に解説し、IELTSの専門家が豊富なアドバイスを提供しています。練習問題や実践問題も本番のような難易度と質で、ライティングは全12問に対して、中級レベルと上級レベルの2つのサンプルエッセイを掲載しています。リスニングとスピーキングの音声は、英・米・豪・加のナレーターが収録し、様々なアクセントに慣れ安くなっています。音声は全て無料でダウンロードできます。
最後に、公認本ではないですが、語彙力強化に焦点を合わせるのであれば、こちらの『実践IELTS英単語3500』も有益でしょう。